こんにちは、ポンクレーです。
今回は、レーシングカートにたまに発生するセッティングの特性について書いていきます。
早速ですが、先日こんな投稿をしました。
ただ、この文章だけだとちょっと足りない部分があります。
その部分を補えたらと思っています。
少し細かく書いているのでちょっと長いです。
目次から該当のリンクに飛ぶことが出来ますので、あなたの困りごとに合わせて必要な章だけを読んでいただけたら幸いです。
もし伝わりづらい表現などがあったらごめんなさい🙇
さて、あなたはこんな経験をしたことはありますでしょうか?
・フロントの調子が悪くてフロントを修正したのに調子が上がらなかった
・リアの調子が悪くてリアを修正したらますます調子が悪くなってしまった
かくいう僕もこれにドはまりしてしまい、約3年間の全日本カート選手権シリーズを棒に振ってしまいました。全日本カート選手権では2回優勝出来ましたが、これにハマらなかったらもう少し早く勝てたかもしれないので悔しいですね。
あなたもご存じの通り、レーシングカートはとてもデリケートな乗り物です。
そのため、
・フロントの入りを良くするためにリアを固くする
・リアの踏ん張りを利かせるためにフロントを弱くする
というケースがまれに起こります。
もしあなたにも身の覚えがあるようでしたら、もしかしたら僕がやった対処法が役に立つかもしれません。ぜひ、僕と同じような悔しさを味合わないよう参考にしてもらえればと思います。
一点注意点です。
「曲げるための対処法」と「曲がりすぎを抑制するための対処法」が同じ、というケースがあります。一見同じことが書かれていると感じたら、その原因と目的に注目してください。同じことをしているようでやりたい事の目的は異なっているはずです。
それでは僕が経験した症状を、起きた原因と対処法ごとに分けて書いています。
必ずしも問題解決に当てはまらないかもしれませんが、なにか参考になれば幸いです。
1.フロントが曲がらない場合のリア側の対処方法
<原因>
このケースで考えられる原因は大きく分けて2つあります。
1.フロントのグリップが足りず、
2.リアタイヤのグリップが足りず、インリフトしていない
今回は、2のインリフトしていない場合のケースについて説明していきます。
インリフトが起こらないと4輪が接地し続けてしまいアンダーステアが出てしまいます。レーシングカートは車と違ってデファレンシャルギヤが付いていないため、コーナリング中はイン側のリアタイヤが浮くことによって外側のタイヤの押し付けと、デフの役割してくれます。そのため、適切なインリフトがされないとイン側のタイヤが邪魔してしまい、アンダーステアが出てしまうということです。
僕自身、ステアリングをあまり切らないタイプでしたので、マシンのねじれを起こすことが出来ていなかったのかもしれません。僕のドライビング的な問題もあったかもしれませんが、ひとまずこれらの対処方法で無事トップ争いに加わることが出来ました。
1.1.リアシャフトを固い材質のものに変更する
フロントの入りが悪いな、と感じた時に僕が最も多く対処し、かつ良い実感を得ることが多かった方法がこれです。僕はトニー系のマシンを乗ることが多かったので、基本的にはNシャフト→Hシャフトに変更することが多かったです。
(もし現在はもっと細かく分けられていたらすみません。)
これの目的としては、捻じれに対する剛性を強くしてインリフトをさせる+コーナー外側のタイヤの押し付けを強くすることです。特に僕はステアリングを極力切らないドライビングスタイルだったので、インリフトをマシンの剛性に任せてしまうのが合っていたと思います。
そのため、自身のステアリング操作でインリフトを意図的に生み出したい、という方の場合インリフトどころかマシンの内型が浮いてしまう可能性が有るので注意してください。
1.2.リアハブにカラーを装着するorリアハブを長くする
こちらも剛性を上げるということでは目的は一致しています。
しかし、リアシャフトのようにマシンの中心部からではなくリアタイヤの周りだけ剛性を高めるだけになるので、滑りを抑制するには足らないケースが多々ありました。
シャフトの変更は時間がかかるため、走行時間中にセッティングの方向性だけでも見ておきたい、という場合に使うケースが多かったです。これによって良さそうな感触があれば次の走行時間までにシャフトを固い材質に変更する、という流れがスムーズです。
固いシャフトに変更した後は、リアハブを元に戻したり、カラーを取り外しておくことを忘れないでください。
1.3.リアの車高を上げる
こちらは剛性ではなく、リアタイヤに掛かる縦の荷重を増やすことが目的です。これによってタイヤを押しつけるチカラが強くなるため、もし滑ったりしないようであればコーナリングスピードを上げることが出来るかもしれません。
しかし、練習中はとても調子が良かったものの、サーキットによってはドライ路面が仕上がってくると車高を再び下げることもありました。そのため、レース当日は車高を下げていることが多いという場合には無理して調整する必要はないかもしれません。
なお、雨の日はサーキットによっては車高を上げてレースに挑むこともありました。
2.フロントが曲がりすぎる場合のリア側の対処方法
<原因>
フロントが曲がりすぎる場合に考えられる原因は大きく分けて2つあります。
1.フロントのキッカケが強すぎる
2.リアのグリップが足りずインリフトする前に微スライドしている
今回はリアのグリップが足りずに微スライドを起こし、オーバーステアになっている場合を想定して説明します。この場合の厄介な点は、リアタイヤが流れていると自分で気付くことができないくらい微々たるスライドが出ている場合です。
これにハマってしまうと、ほとんどの人がフロントをいじってしまうため、フロントを弱くすることによってコーナリング全体のレベルを下げてしまいます。
そうならないように自分のマシンが今どういう状況にあるのかをしっかりと把握しましょう。
2.1.リアタイヤのトレッド幅を広げる
もしリアタイヤのトレッド幅に余裕があれば、最も迅速な対処方法としてはトレッド幅を広げる事です。もしトレッド幅1400mmまでに少しでも余裕があれば試してみると良いでしょう。
また、トレッド幅を広げてもフロントが曲がりすぎると感じるようであれば、そもそもリアのグリップが足りないず滑っている可能性が考えられます。しかし、ドライバーのドライビングも合わせて全てのバランスが重要なので何かひとつ変える事で改善するわけではありません。
迅速な対処法に加えてセッティング方針が少し見えるので、僕は滑っていると感じたらトレッド幅を5~10mm広げるということを意識していました。
2.2.リアシャフトを固い材質のものに変更する
リアタイヤのトレッド幅を広げて改善傾向が見られない、またはコーナリングレベルがさらに下がったと感じた場合はシャフトを固いものにチェンジします。今回シャフトを固いものに変える目的は主にリアタイヤのグリップを上げて滑りを止める為です。
フロントが曲がらない場合と曲がりすぎる場合で同じ対処法で良いのだろうか?という疑問もあるかと思います。しかし、フロントが曲がらないときとは原因が違うため、同じ対処法でも解決する可能性があります。
反対にシャフトを柔らかいものに変更するとますます滑ってしまう可能性があるので注意してください。もしシャフトを柔らかくしたほうがリアが軽くなって速くなった、という方は僕とドライビングスタイルが大きく違うのであまり参考にしない方が良いかもしれません。
2.3.前後ともにノーマルの状態に戻す
フロントが曲がりすぎるときにリアに原因があるケースはとても稀です。そのため、この手のケースでフロント側の修正して治らない場合は、そもそもの前後バランスが崩れていることを疑ってみても良いかもしれません。
前後のバランスが崩れてしまい、セットアップに有効な方針が見えない時は、可能な限り標準と思われるセットアップに戻すことも有効です。もし本番までにまだ時間があるなら、ノーマル状態に戻してそこから探りなおすのも良いかもしれません。
3.リアの動きが鈍い場合のフロント側の対処方法
<原因>
リアの動きが鈍い場合におけるフロント側の対処法についても書いていきたいと思います。しかし、リアの動きをフロントで対処する機会はあまり多くありません。
ほとんどのケースでリア周りを調整するだけで対処できると思います。そのため、あくまでそういうケースもあるんだなと参考程度に留めてもらえればと思います。
主に考えられる原因としては下記の通りです。
1.フロントの剛性が足りずリアまで捻じれが生まれていない
2.フロントタイヤのトレッド幅が広すぎて最初のキッカケが足りていない
リアの動きの鈍さが必ずしもフロントが強すぎるわけではない可能性があります。フロントが弱すぎる場合もあるという点だけ頭の片隅に置いといてもらえたらと思います。
余談ですが全日本カテゴリーだとタイヤのグリップが強すぎるがために、タイヤが路面に張り付いてはがれなくなってしまいます。停車してスタンドに持ち上げたらアスファルトを引っ剥がすレベルです。当然走行中も張り付いてしまうため、インリフトさせるために普通よりも強い剛性が必要だと当時の監督に教えてもらいました。
3.1.フロントのスタビライザーを装着するor固くする
リアの動きの鈍さを感じた時にフロントで出来る一番手っ取り早い対処方法はスタビライザーを装着する、またはスタビライザーを固くすることです。
そしてこれは僕の好みですが、トニー系のスタビライザーは平型よりも丸型のタイプの方がちょうどいいです。僕はほとんどのサーキットで丸型の1.5mm厚のスタビライザーを好んで装着していました。前も後ろもカチカチの鉄板シャーシが僕のベストセットです。
1.5mmだとあまりにも固すぎて走れないという場合には、両サイドにある固定具の内側ネジを1本ずつ取り外してあげると少ししなやかさが出るので有効です。もう片方の増し締めを忘れないよう注意してください。
3.2.フロントタイヤのトレッド幅を狭める
こちらは説明は不要かと思いますが、キッカケを作りやすくしてフロントの入りやすさを上げることが目的です。フロントの動きが良くなれば連なってリアも動くようになる可能性があります。
しかし、ステアリングをあまり切らない僕にはカラー半枚では変化が体感出来ず、いつも片方で1枚は調整していました。僕の感覚が鈍いといえばそれまでですが、半枚でもちゃんと体感出来る場合は半枚ずつで調整していただければと思います。
3.3.フロントの車高を下げる+シート位置を前に出す
フロントの車高を下げることでフロントに荷重を移りやすくし、リアの荷重を抜いてインリフトをさせることで逆に動きがクイックになることもあります。また、これと同時にシート位置も若干前にずらしているので相当荷重がフロントに移りやすい状態になっています。
しかし、僕の経験上この調整は小回りが求められる新東京サーキットで有効だっただけです。コース自体が大きい中高速コースでは試していませんが、こんなピーキーなマシンはほぼ合わないと思います。
当時はどうしても調子が伸びず苦肉の策でしたが、小回りが必要なサーキット限定で参考の一つにしてもらえたらと思います。
4.リアの動きが軽すぎる場合のフロント側の対処方法
<原因>
この場合の原因はそもそも路面が仕上がっていないためにマシンが軽く感じてしまうケースが割と多いことと思います。そのため、路面が仕上がらないうちにこれに対処しようとするとレース当時にマシンバランスが崩れてしまう可能性があります。
しかし、セッティングで起きている場合は話が別です。意識するべき内容としては、
1.フロントタイヤのトレッド幅が極端に狭くなっている
2.アライメントに狂いが生じている
3.初期の状態で荷重バランスがフロントに寄りすぎている
絶対ではありませんが、この順番で原因を探ってみるとスムーズかと思います。
荷重バランスを変える場合、車高調整だけで済めばいいですが、必要に応じてシート位置も見直す必要があります。ただ、あからさまにシート位置がおかしいといった場合はそこから着手する必要があります。
4.1.フロントのスタビライザーを柔らかくするor取外す
まずはフロントが強すぎている場合として、フロントを軸にリアが振り回されている可能性があります。そのため、フロントの剛性を下げることを目的に、フロントのスタビライザーを柔らかい素材に変更するか、取り外してみましょう。ここから着手する理由としては走行時間中に変更が出来ることと、変化がドライバーにもタイムにも実感しやすいためです。
もしあなたが僕のように1.5mm厚のものを普段使いしているなら、スタビライザーの固定具の内側にあるネジを一本だけ外してみてください。良い傾向であれば1mm厚のスタビライザーに変更してみましょう。そうして良いバランスを探ってみてください。
4.2.フロントタイヤのトレッド幅を広げる
フロントタイヤのトレッド幅を広げることによって、最初のキッカケ作りがマイルドになります。そのため、初期の回頭性が良い具合に抑えられると、リアとのバランスが釣り合う場合があります。
しかし、回頭性が落ちた事によって低レベルな次元でバランスが取れてしまった場合は、そもそもリアに原因があるかもしれませんのでリアを見直してみましょう。
4.3.アライメントを見直してみる
上の二つを見直してみても症状が改善されない場合、アライメントに狂いが生じている場合があります。レーシングカートのパーツは懸念劣化や、フレーム自体の微細な歪みなどでミリ単位でズレがしょうじてしまうことがあります。
あるいはレンタルシャーシなど普段使用していないマシンだった場合は、走行前に見直しておいた方が良いでしょう。案外適当に組まれていたというケースも残念ながらあり得ます。レンタルシャーシは割とちょっと物知りな素人の方が組んでいるケースも有り得ますのでちゃんと自分で確認しましょう。
僕の経験談としては、サーキットサポートをしていた際に、変なインリフトをしていて、どうにも調子が上がらずドライバーもとても走りづらそうにしていました。そこでアライメントを見直してみると、なんとタイヤが逆ハの字になる状態で組まれていたのです。(ドライバーが自ら気付よ、というツッコミは無しでお願いします。本人もショックを受けていたので。)
ただ、アライメントの狂いはドライバーが自らの腕で修正してしまうのでなかなか本人には気づきづらいものです。外から見て変な動きしてるなと思ったらすぐにチェックしましょう。
4.4.フロントの車高を上げるorシート位置を下げる
これは荷重がフロントに掛かりすぎてしまい、リアの荷重が抜けたことによってリアが振り回されている場合の対処法になります。そのため初期の状態でフロントにかかりすぎている荷重をややリアに移すことが目的になります。
ただ、フロントの車高を3段階の真ん中にしている時はそういう症状が起きる可能性は低いと思います。(もちろん絶対ではありませんが。)フロントの車高が真ん中の場合でリアが滑るようであれば、シート位置を見直してみるのも良いでしょう。今回は、あくまでフロント側での対処法になりますので、シート位置の変更については補足的な意味合いにさせていただければと思います。
5.もしここまでやってみてダメだったら
その時はすぐにフレームやステーにヒビが入っていないかチェックしてみてください。ヒビが入っている時に起きる基本的な症状としては下記の通りです。
・どんどん固くしているのに何をやっても剛性が足りない気がする
・走行開始後に一発のタイムは出るけどその後が続かない
・コーナリングの限界が低くすぐにスライドしてしまう
もしよっぽどマシンに変なところが無く、このような症状があればすぐにヒビを疑いましょう。
良くヒビが入りやすいチェックする場所としては下記の通りです。
・メインパイプ(リアの横に橋渡しされてるパイプ)の溶接部分
・ブレーキ回りの溶接部分
・エンジンマウントで隠れる部分
・メインのシートステー
・フロアパネルのネジ付近
・フロントのナックルの取り付け部分
・フロントバンパー付近
・リアスポイラーの取り付け部分付近
・サイドボックスの取り付け部分
特にフレームに入ったヒビは塗装の割れと重なって非常に見えにくいです。そのため、妙な線が入っていると思ったら塗装を剥いでしっかり確認をしたほうが良いでしょう。
ヒビが入ったマシンで走っても戦闘力が半減してしまい、あなたの本来のチカラが出せなくなってしまいます。せっかくレースを楽しむなら、万全の状態で挑めるようにしっかり人事を尽くして天命を待ちましょう。
長くなってしまったので、今回はここまでとさせていただきます。
それではまた!
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